告別式、お寺の読経が終わり火葬場へ出発の前『お花入れ』『お別れ』という時間があります。参列した者で棺の中に「お花」や「思い出の品」を入れます
今回は、この棺に入れるもの(副葬品)について解説します
柩に故人を納める納棺の儀
納棺のタイミングは「臨終後すぐ」とか「通夜の直前」など様々です。そして多くの方が棺に遺体を納める時、一緒に副葬品を入れます
旅支度は葬儀屋さんが用意してくれる
仏式では一部の宗派を除いて亡くなった人は、浄土へ行くため四十九日間旅をするといわれています。「怪我をしないように」「無事にたどり着けますように」という願いから、故人の身支度を整えます
『旅支度』と言われ、経帷子(白装束)・白足袋・脚絆(きゃはん)・手甲・数珠(念珠)・三角頭巾(天冠)・六文銭・草履・編み笠・金剛杖などです
これらは亡くなった病院で身に着けてくれたり、無い場合でも葬儀社が一式用意してくれます
よく棺に入れる物
故人に「向こうの世界へ一緒に持たせてあげたい」という気持ちから、遺族は棺にいくつかの品を入れます。棺に入れて良いものは決まりがあり、基本的には『燃えるもの』に限られます
故人が愛用していたもの
- 着物や洋服、帽子、ネクタイ、財布
- 愛読書
- 書や絵画、筆や鉛筆
- 人形やぬいぐるみ
好物だったもの
- お菓子やおつまみ
- タバコ
- お酒(紙パックの小さい物)
- 果物(小さなもの)
故人への気持ち
- 手紙
- 似顔絵や折り紙
- 写真 ※注意が必要です。後述参照
棺に入れてはいけない物
火葬場はそれぞれ『入れてはいけない物』を取り決めています。「少量なら」「こっそり入れれば、ばれない」と、なんでも入れてしまう方もいますが「火葬炉が壊れた」とか「葬儀社が出入り禁止になった」など損害を請求されるような大問題になるケースもありますので、品物を入れる前に葬儀社に確認しましょう
不燃物、金属、ガラス、カーボン製品など
- ゴルフクラブ、ペン
- 茶碗、湯呑み
- 缶ビール
- 杖、釣竿、楽器
- メガネ、アクセサリー、硬貨
不燃物は入れられません。一見燃えそうな『杖』や『楽器』なども素材によっては大部分が残ってしまいます。木製であっても竹製品は残りやすいです
不燃物を入れることを禁止されている中、「入れてあげたい!」と要望の多いのが『メガネ』や『アクセサリー』です。気持ちは解りますがやはり不燃物なので入れられません。ガラスが骨に付着してしまう事もありますし、火葬後、焦げて残った『メガネ』をどうするか判断に困ります
そういった燃えずに残った物の多くは火葬場で供養(処分)となることが多いのですが、それであれば最初から棺には納めず、綺麗な状態で骨壺に入れたり、後で仏壇に供えた方が故人も喜ぶのではないでしょうか?
ちなみに、硬貨は燃えないという理由のほかに、現金を燃やす行為が違法となりますので注意しましょう(貨幣損傷等取締法)
爆発の可能性がある物
- スプレー
- ライター
- ボール
- ペットボトル
- ピースメーカー
当然ですが爆発が予想されるものは入れられません。遺骨だけでならまだしも、火葬炉を損傷させることがあり、最悪の場合火葬炉の修理や、稼働できない期間の損害を請求されてしまう事も考えられます。程度によって数万円~数百万となるでしょう
大量に水分を含むもの
- 大きめの果物
- お酒、ジュース
灰が大量に出るもの
- 辞典などの分厚い書籍
- 大量の衣類
可燃物であっても量が多いと問題です。一ヶ所に火力が集中してしまい遺骨がボロボロになってしまったり、灰が大量に出て拾骨の妨げになることもあります
有毒ガス発生の恐れがある物
- ビニール、ゴム製品
- 発泡スチロール
- プラスチック製品
これらも基本的には燃えますが、有毒ガスが発生したり公害の原因となる事があります。近隣の了解を得て運営している火葬場にとって、この問題は神経質になる部分ですので気を付けましょう
その他、棺に入れるものの疑問と注意
写真を棺に入れる時の注意点
写真を棺に入れる時は、誰が写っているのか確認しましょう。本人だけが写っているものや人物が写っていない物なら問題ありません。
しかし、生きている他の人間と写っているものは「向こうの世界に連れて行かれる」などの俗説もあります。後々嫌味を言われたりトラブルになるケースもあります。
家族の写真であれば本人の了解を得て棺に入れても良いと思います。家族が飼っていたペットの写真も、ほかの方に迷惑を掛けませんので問題ないでしょう
家族以外の親族や、知人・友人が写っている写真は、生前どんなに仲が良かったとしても棺に入れない方が賢明です
先祖の位牌を棺に入れていい?
位牌は木製ですので火葬場的には棺に入れても問題ないかもしれません。しかし、位牌は「故人と現世を結ぶもの」であり「故人そのもの」ともいわれます
遺族が仏教徒ではなく、俗説や迷信なども信じない方でしたら入れても構いませんが、そうでないのであれば棺の中に入れてしまうのはやめた方が良いでしょう
管理できない位牌は、お寺と相談しお焚き上げするなど、しっかりと供養するものです
ペットの遺骨は棺に入れていい?
「大好きだったペットと一緒に」という気持ちは理解できます。燃えないので本来入れてはいけない物ですが、少量でしたら火葬場も気づかないでしょう。また火葬の時でなく拾骨のあと骨壺に入れる方もいます
しかしこれも注意が必要です。お寺によっては動物の遺骨は納骨させてくれませんし、親族の中には、一族の墓地に動物の骨が混じることを良く思わない方もいるかもしれません。相談してから決めましょう
「棺に入れられるもの」のまとめ
故人を想い副葬品として色々な物を棺に入れてあげたいという方は少なくないでしょう。しかし取り決めとして入れられない物、俗説や迷信により入れない方が良い物は沢山あります
気の利く葬儀屋さんなら、入れてあげたいけど入れられない物をどうするかアドバイスしてくれるでしょう。例えば「火葬用の木製のものを用意」してくれたり、「愛用のゴルフクラブを写真で撮って納める」など様々な方法を考えてくれます
葬儀は遺族が主役となりますが、火葬場は多くの方が利用します。ルールを守り、且つ節度をもって故人を送りたいですね