位牌を作るとき、墓誌に故人の名前を刻むとき、年齢をどう表記するかという問い合わせをよくいただきます。「享年」と「行年」、「○○才」と「○○歳」どの組み合わせが正しいのでしょう?
行年 享年の意味
行年(ぎょうねん)とは
この世に生まれて(娑婆で)修行した年数。何歳まで生きたか。
享年(きょうねん)とは
天から享(う)けた年数。何年生きたか。
意味の違いはあるにせよ、なんだか良くわかりませんね。行年は自分自身で積み重ねた(獲得した)年数で、享年はもともと決まっていた寿命とも受け取れます。しかし、同じ意味(同意語)として使われています。どちらを使っても間違いではありません。もちろんどちらが立派で、どちらが劣っているということもありません。
葬儀では、お寺の住職が戒名や年齢を記して位牌を用意してくれますので、それに倣って故人の年齢を紹介します
満年齢と数え年(歳)
現在私たちが普段使っている年齢は「満年齢」で表しています。生まれた時を「0歳」とし、誕生日ごとに「1歳」「2歳」としています。
昔は「数え年」で表していました。母親のお腹の中に生を受けた時点から数えるとか、歳を重ねることは良いことで少しでも多くという考え、また0歳という感覚はなかったなど考え方はいくつかありますが、生まれた時から「1歳」で計算していきます。そして誕生日ではなく年の入れ替わり、つまり1月1日(元旦)に歳が加算されていきます。今でも長寿を祝う「還暦、古稀、米寿」などは「数え年」で祝うことがあります。よく「数え年」=「満年齢+1」と思ってる方もいますがこれは間違いです。その年の誕生日前であれば「+2」となります。
例えば
9/1に生まれた場合、生まれた時(9/1)から12/31まで「1歳」です。
年が明けて、1/1~12/31までが「2歳」となります
さらに翌年の1/1~「3歳」になります
1950年に年齢計算に関する法律が施行され、政府は国民に対して満年齢での表記を推奨しています。
1950年の法律施行のあと「数え年」から「満年齢」に変更することで、それまでの年齢にズレが生じてしまう理由から、古くからある寺院では「数え年」での計算のまま現在に至っています。逆に、比較的新しい寺院では、そのズレはないので「満年齢」で表記・計算するところがあるのです。
ちなみに年齢を表す「才」と「歳」はどちらを使っても構いません
行年(享年)の数え方
私も以前いくつかのお寺の住職に話を聞いてみました。が、答えは出ませんでした。それぞれのお寺によって考え方が違うのです。「行年(享年)=数え年齢」という住職もいれば、「いや満年齢で記します」という方もいる。また、「享年が満年齢で、行年は数えだよ」という方もいます
結局どう書くのが正解なの?
上でも述べたように、決まりがないので何が正解ということはありません。しかし、各家で「お爺さんは行年、お婆さんは享年」というような使い方はしません。ご先祖に倣って同じように記します。菩提寺がある場合は、作っていただいた仮位牌(白木位牌)の通りに記すのが一般的です。お寺の住職に問い合わせると説明してもらえますので、住職の考えを納得した上で作るのが一番良いでしょう。
昔は年齢を数え年で表していましたから、昔のまま表記しているお寺と、現代の一般的な年齢の数え方「満年齢」で表記するお寺とがありますが、どちらも間違っていません。
現場の感覚としては、菩提寺がある場合ご先祖に合わせ「数え年」で記すことが多く、葬儀社や霊園が新規に寺院を紹介する場合は「満年齢」で記すことが多い気がします。
そして、「享年」と「行年」も寺院によってそれぞれで、由緒正しい寺院がどっちを使うという事もありません
「訃報」などに記載する年齢
遺族や会社、団体などから葬儀の日程等をお知らせする死亡通知、いわゆる『訃報』には大抵、日程と場所の他に、歿日や故人の年齢を記載します
身内だけでなく周囲(世間)に発する文章です。役所で使っている公的な年齢(満年齢)で記載する方が良いでしょう
訃報(死亡通知)は『享年』+『満年齢』で表記するのが一般的です ※『歳』は付けても付けなくても構いません
訃報とお寺が用意した『位牌』の年齢が異なってしまう場合もありますが、これは遺族が理解していれば問題ない事です
※番外的なプチ知識
蛇足になりますが、位牌や墓誌は「書き」と「彫り」のどちらかで作ります。しかし、どちらにしても長い年月がたつと風化したり痛んだりします。このことを考慮すると、文字を彫る場合は字画が少ない方が「割れにくく長持ち」します。年齢を表す”才”と”歳”なら「才」の方が、また”行年”と”享年”なら「行年」のほう割れにくくなります