こんにちは。日常の中で、仏壇の扉は基本、閉じることはありません。掃除とか引っ越しの時くらいでしょう。しかし、葬儀の時はどうすればよいのでしょうか? 意見が様々なのでまとめてみました
臨終から自宅に安置
病院で亡くなった後、葬儀屋さんが自宅や会館に搬送してくれます。自宅の場合、遺族も一緒になって、安置や枕飾りを手伝います
葬儀屋さんは故人を布団に寝かせ、必要であれば着替えやドライアイスの処置を施します。お参りが出来るように机や香呂、蝋燭・線香を用意してくれます。自宅に神棚があれば半紙で『神棚封じ』をします。が…ここで「四十九日(忌中)の間は仏壇の扉を閉じてください」と遺族にお願いする葬儀屋さんが多いようです。遺族はなにも知りませんので、言われた通り仏壇の扉を閉じますが、はたしてこの作法は正しいのでしょうか?
仏壇の扉は閉めるべきか?
この疑問は、多くのご遺族から問い合わせがあります。筆者も付き合いのある何人かの住職に同じ質問をぶつけてみましたが、全員一致とはなりませんでした。「閉じる」と仰った方も、「開けておく」と仰った方もいたのです
なぜ「閉じる」「開ける」意見が分かれる?
神仏習合と地域での風習・迷信
神棚の前に白い紙や半紙を貼る「神棚封じ」があります。これは、神道では「死」を「穢れ(けがれ)」としており、故人を含め遺族も、忌中の間は神様に近づいてはならないとされているためです
この神道の教えが混同し、神棚と同じように「仏壇を閉じる」ということになったと推測されます。ただし、これは一概に間違えとは言い切れません。同じように神道や、儒教、またただの迷信が仏事に影響を与えていることは多くあるからです
例えば「清め塩」は仏教には関係ありませんし、「友引に葬儀をしない」や「収骨の仕方」などは語呂合わせや迷信から生まれたものです
宗派による考え方の違い
各宗派のご住職に問い合わせた所「手を合わせる対象がご本尊」という意識が強い宗派では「開けておく」という答えが100%です。これは、浄土真宗、浄土宗、日蓮宗、日蓮正宗などです。理由として、
- 故人は本尊の導きによって成仏される
- 葬儀も法要も本尊の前で執り行われる
意見が分かれたのは、真言宗、曹洞宗、臨済宗です。「閉じる」の理由として、
- 参拝のとき誰もが故人に対して手を合わせますが、その時に本尊やご先祖にお尻を向けてしまう事があり失礼にあたる
- 葬儀の準備は騒々しく仏壇の前を横切ったりもする。本尊や先祖に失礼の無いように
- 葬儀は故人対して回向するため
- 日本では葬式は仏式で行うが、神棚をはじめ七五三や厄払い、初詣など神道も信仰している人が多く、仏教の作法だけを行うというのは難しい。地域の風習に倣うという考え
葬儀屋さんの勉強不足?
「臨終後、仏壇の開け閉め」に関して記載のある葬儀屋さんのホームページを見ると、なんと8割くらいが「閉じる」「閉じてください」と案内しています。まあ、もともと開いてるものを「開けてください」とは表記しないので当然かもしれませんが。もちろん、仏壇の扉について全く触れていないところもあれば、「菩提寺に確認をしてください」と表記している所もあります
仏教の信仰か?地域との同調か?
で、結局どっちなの?と言われそうですが、仏教の作法としては「仏壇は開けておく」が正解です
特に、浄土真宗は迷信の類を一切認めていませんので、どの寺院に聞いても「開けてください」と仰るはずです
しかし地域や親族の間で、「閉じる」風習がある場合、開けておくと『常識がない』と思われてしまう恐れもあります。先に述べたように、多くの葬儀屋さんが「閉じる」と教えていますので、それが常識化していまっています
仏教の作法に従うか、周囲に冷たい目で見られないよう同調するか、遺族は選ばないといけません
最終的には菩提寺に確認
先祖代々の墓地を供養してくれている菩提寺があれば、直接確認してみましょう。特に、そのお寺が自宅の近所にあるのなら、地域の風習も取り入れた答えを教えてくれるはずです。「お寺から開けておくように言われた」と言えば、ご近所のおばさんや、親戚のおじさんの余計な助言へも、角を立てずに対抗できるはずです