地域によって多種多様な風習があります。葬儀の世界でも関東と関西、また東北や北海道と離れた地域はもちろん、隣の県、隣町と近場でも知らない作法があったりします。今回は、そんな葬儀の風習の一つ『長寿銭』をご紹介します
葬儀なのにお祝い?
葬儀の会葬礼状と一緒に【長寿銭】を貰う事があります。お祝い用のポチ袋に、硬貨が入っています。これは地域の風習によるものですので、初めて貰う方は意味が解らず「これって香典返しなの!?」などと戸惑ってしまうかもしれません
長寿銭の意味
東京都内ではあまり見かけませんが、首都圏ですと群馬県を中心に、埼玉、千葉の一部でも【長寿銭】を配る風習があります。これは、亡くなった故人が長寿であったことにあやかり、長寿銭を持ち帰った方も長生き出来ると言われています。
こういった葬儀では、遺族は大切な家族を失った悲しみと「故人が天寿を全うできた」「大往生だった」という思いがあると察します。また【長寿銭】を配ることにより、会葬者の方にも、ただ悲しむのではなく長生きした故人を称えて、送り出して欲しいという思いもあるのでしょう
長寿銭の準備
何歳まで生きたら長寿銭を配る?
地域の風習ですので、特に決まりがあるわけではありませんが、大体、米寿の数え年で88歳、または満90歳以上の方の葬儀で配ることが多いです。長寿銭は葬儀社から薦めることはあまりありません。遺族が故人の死に対して、どう感じているか解らないからです。ですので遺族側から「長寿銭を配りたい」と提案される場合がほとんどです。
しかし誰もが大往生と感じる100歳(満98歳)を超えている場合は、葬儀社側から家族に【長寿銭】を提案することがあります
長寿銭ポチ袋、祝儀袋を作る
中に入れるものは、基本的には硬貨一枚ですのでポチ袋になります。
- のし・水引付の祝い袋を用意します。
- 水引の上側に「長寿銭」
- 水引の下に「故人の名前」と「年齢」
年齢に関しては、満年齢でも数え年でも構いません。昔は、一つでも多く年を取ることが幸福とされていましたので、満年齢より+1か+2になる数え年の方が良いとされることもあります。
しかし、渡す相手(会葬者)が年齢を勘違いしてしまうこともありますので、私は満年齢で表記した方が良いかなと思います。
遺族が用意できない場合は、葬儀社にお願いしましょう。会葬礼状と一緒に専門の業者さんが作ってくれます。私の場合は自分で作ったりもします。
こんな感じのをプリンター対応の和紙に印刷して、切り取り糊付けします
中に入れる金額はいくら?
入れる硬貨に決まりはありません。遺族の考えで、5円、10円、50円、100円、500円と様々です。(さすがに1円というのは聞いたことはありませんが・・)
語呂合わせや、硬貨に描かれた物で選ぶ方が多いです。また、100円と5円とか硬貨をつ入れることもあります。
5円玉
- ご縁があるように
- 描かれた稲穂が、故人の成熟さを表す
10円玉
- 十分(充分)に生きる
- 描かれた「常盤木」は1年中緑の葉を絶やさないことから、永久を示す
- 錆びやすく汚れやすいが、磨くと物凄く光るため、俗世に染まらない奥に秘めた美しさを表す
50円玉
- 十分なご縁、5重の縁
- 描かれた「菊」は、日本の国花でもあり清らかさを表す。また「生命力」や「元気」という花言葉もある
100円玉
- 100のご縁
- 「桜」の花言葉に「あなたに微笑む」や「私を忘れないで」がある
- 100歳のお祝い
500円玉
- 最大の効果(硬貨)
- 「橘」は古来より日本国にある唯一の柑橘種であり、長久を感じさせる
- 500円の場合、会葬者が多いと相当な金額になるので注意が必要
長寿銭は使ってもいい?
御守りとして残しておいたり、身近な高齢者にあげることもあります。もちろん、お財布に入れて、普通に買い物で使うのも問題ありません
長寿にあやかる他の風習
長寿銭のほかに、地域のよっては「紅白饅頭」や「紅白砂糖」「お赤飯」を配ることもあります