『骨を海に撒いて自然に帰る』ここ数年、「散骨」や「自然葬」という葬送手段が各メディアでも取り上げられることが多く、「格好いい」とか「神秘的」など世間のイメージも良いかと思います。またお墓が不要になるわけですから「合理的な方法」と捉え、費用の面でも期待が持たれていることでしょう。
有名人では、俳優の石原裕次郎さんや漫才師の横山やすしさん、落語家の立川談志さんなどが散骨を選んでいます
諸外国の「散骨」実情
アメリカ、カナダ、中国、韓国、ロシア、フランス、ドイツ、スイス、インド、オーストラリアなどなど主だった先進国は、法律や規定で一部制限はあるにせよ「散骨」や「自然葬」について寛容で認められています
日本の散骨に対しての法律と手続き
結論から言いますと、日本には散骨についての法律はありません。非公式ながら法務省の見解としては「節度をもってする葬送であれば、問題はない」としています。つまり、「人に迷惑がか掛らなければ違法ではない」ということです。ただし骨の形状のままでは「遺骨の遺棄」という刑法に触れるおそれがあるので、遺骨を細かく砕き粉末状(遺灰)として撒くことになります。加えて、粉末状にした後も土中に埋めてしまうと埋葬となり、これも法に触れる可能性があるのでるので、撒くという形をとります。また、自治体によっては条例で散骨禁止と定めている所がありますので注意が必要です。
手続きも、埋葬ではないので特には必要ありませんが、海ではなく陸に散骨する場合は、当然ですが地権者の許可が必要となります
まずは、砕骨、粉骨から
先に述べたように、遺骨のままでは散骨できません。最低2mm以下に砕くかパウダー状にします。これは、遺族(家族)でおこなっても構いませんし、専門の業者に依頼しても構いません。都内で大きな所では「戸田葬祭場」が粉骨のサービスを提供しています
散骨可能な場所
陸上では、近隣の方の理解が得られる場所となります。そのため自分の所有地でも他人の私有地でも、広大な山林の中となることが多いでしょう。また、遺灰には水を汚染するような成分はありませんが、水源の近くや、観光地の近くなど風評被害の可能性がある所は山中であっても散骨することはできません。
そのため、一般的に散骨は「海」で行われます。ただし海であってもいくつか条件があります。「節度を持った・・」という観点から、漁場や養殖場、海水浴場の近くは出来ません。少なくとも海岸線から10km以上離れたところが好ましいと思われます
散骨の費用(相場)
一番安いのは、すべて自分でやることです。一切お金をかけずに執り行えます。砕骨(粉骨)して、親戚が所有している山林か、どこかの山の所有者に許可を取って撒かせてもらう。しかし交渉が大変ですので、トラブルを避けるためには、法律に詳しい方の助言が必要です。
そのため通常は業者に任せます。費用は葬儀と同様様々です。多くの業者がありますので、プランなどよく見比べましょう。
立ち合い無しで全て業者にお任せするのであれば、4~10万円くらい。一緒に船に乗っていくのであれば、15~150万円くらいと、まだまだ新しい業界のためサービスによって価格は大きく変わってきます。
一つ注意点として「先祖からのお墓はどうするのか?」ということも頭に入れておきましょう。散骨はその方だけなのか?それとも今後、先祖からの墓地は使用しないのか?墓じまいするのか?などなど、場合によっては一般的な墓地を使用するよりも、費用が多く掛かることがあります
実はグレーゾーン。注意が必要です
散骨するにあたって、まずは親族の同意が得られるかが問題となります。あとから、やっぱりお墓を作りたいといっても、もう遺骨はありません。また、お墓がないため今後の法要もやりにくくなります。
法務省は法的には「違法ではない」とありますが、「合法だ」とも言ってません。つまり散骨に対しての法律がないので、何とも言えないという状況です。各自治体が条例で定め始めているので、今後散骨できる場所も減ってくるかもしれません。
それと全く関係のない人にとっては、「気持ち悪い」とか「環境が・・」とか考える人も少なくないでしょう
まとめ
テレビやインターネットで「散骨」は、かなり美的に紹介していますが、まだまだ散骨を選ぶ方はごく一部です。色々なことに配慮が必要となりますので、安易に「オレの骨は海に撒いてくれ」と遺言にしてしまうと、残された遺族は逆に負担と感じるかもしれません。自由に選択できるのが一番いいと思いますが、国は時代の流れを感じ散骨について法的にどうなのか、はっきりさせる事が必要です